半導体製造の要②「露光」と最先端EUVの進化

半導体製造の工程の中でも「リソグラフィ」は、微細な回路パターンをシリコンウェハ上に描き出す重要な技術です。前回の記事ではリソグラフィの基本を紹介しましたが、今回はその中心となる 「露光」 に焦点を当てます。露光とは何か、どのような光源が使われてきたのか、そして現在の最先端技術である EUVリソグラフィ へと進化してきた背景を整理します。

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露光とは?

「露光」とは、フォトマスクに描かれた回路パターンを光を使ってウェハ上の感光性材料(レジスト)に転写する工程です。写真フィルムに光を当てて像を焼き付けるのと同じ原理で、半導体製造ではナノメートル単位の精度でパターンを形成します。
露光の精度は、使用する光の波長に大きく依存します。波長が短いほど細かいパターンを描けるため、半導体の微細化は「より短い波長の光源を使えるかどうか」にかかっていると言っても過言ではありません。

SEMIくん
昔の写真みたいに、ネガから焼き付けるイメージだよ。
RIN
ネガがフォトマスク、写真用紙がウェーハ。1枚のネガで同じ写真を何枚も作れるように、1つのマスクで何枚もウェーハにパターンを転写できるんだね。

光源の進化:波長短縮の歴史

半導体露光で使われてきた光源を整理すると、以下のようになります。

光源 波長 主な世代 特徴
g線(水銀ランプ) 436nm 1980年代 初期のリソグラフィ。解像度は低いが装置が簡易。
h線 405nm 1980年代後半 g線より微細化可能。
i線 365nm 1990年代 DRAMやロジックの量産に広く使われた。
KrFエキシマレーザー 248nm 1990年代後半~2000年代 0.25μm世代。液浸技術前の主流。
ArFエキシマレーザー 193nm 2000年代~現在 液浸リソグラフィで微細化を延命。10nm世代まで対応。
EUV(極端紫外線) 13.5nm 2019年以降 7nm以下の世代で必須。ASMLが独占的に供給。

この表から分かるように、半導体の進化は「光の波長を短くする歴史」そのものです。

EUVとは?

EUV(Extreme Ultraviolet)は波長13.5nmという極端に短い光を用いる露光技術です。従来のArF液浸リソグラフィでは限界が見えていたため、7nm以降の世代ではEUVが不可欠となりました。

EUVの仕組み

  • 光源:高出力レーザーをスズ(Sn)に照射し、プラズマを発生させてEUV光を生成。
  • 反射光学系:EUVはほとんどの物質に吸収されるため、レンズではなく多層膜ミラーで反射を繰り返して光を導く。
  • マスク:透過型ではなく反射型マスクを使用。欠陥検査が難しい。
  • レジスト:高感度かつ高解像度の材料が必要。

EUVの課題

  • 光源の出力不足 による 生産性(スループット)の制約

EUVでは、スズ(Sn)をレーザーで照射してプラズマを発生させ、その際に出る13.5nmの光を使います。しかし、この光は非常に弱く、十分な強度を得るのが難しいのです。光が弱いと、ウェーハ上のレジストにパターンをしっかり焼き付けるために 時間がかかる か、あるいは 複数回の露光 が必要になります。

 

  • マスク欠陥の検出・修正が難しい

EUVはほとんどの物質に吸収されてしまうため、従来の透過型マスクではなく「多層膜の反射型マスク」を使います。この多層構造の中に欠陥があると、検出が困難で修正も難しいです。透過型マスクならレーザー修正などで欠陥を直せますが、反射型マスクは層構造が複雑で、修正すると光学特性が崩れてしまう可能性が高いです。

 

  • EUV装置コストと供給リスク

EUVリソグラフィ装置は 1台あたり数百億円規模という非常に高価な設備で、導入できる企業は限られます。さらに、世界で唯一量産レベルのEUV露光装置を供給しているのはオランダの ASML社であり、事実上の独占状態です。そのため、高額な投資負担による参入障壁の高さと、特定企業への依存による サプライチェーンリスクという二重の課題が存在します。

 

SEMIくん
EUV用フォトマスクは、1枚数千万円〜数億円。欠陥があると大量のウェーハに同じ欠陥が転写され、歩留まりが大幅に低下してしまうんだ。
RIN
欠陥を直すのはとても難しいから、「欠陥のないマスクを新しく作る」方が現実的と言われているよ。

 

今後の展望:High-NA EUVへ

EUVはすでに量産ラインに導入され、7nm世代以降の先端ロジック半導体では必須技術となっています。今後の進化として注目されているのが High-NA EUV です。

  • High-NA EUV:開口数(NA)を0.33から0.55へ拡大し、解像度をさらに向上。2nm世代以降での導入が期待される。
  • マルチパターニングとの併用:EUV単独では限界があるため、複数回の露光を組み合わせる技術が必要。
  • 材料革新:新しいレジストやマスク技術の開発が進行中。

 

以上、今回は「露光」やその最新技術である「EUV」についてまとめてみました。