半導体業界で働きたい方や、半導体業界の企業に投資したい方にとって、「強い企業」を見分ける力はとても重要です。
今回は、グローバル企業と日本企業の両方を取り上げながら、半導体業界特有の構造を基にに、どんな企業が強いのかを解説します。
なぜ「半導体業界」は儲かるのか?
まず押さえておきたいのが、半導体業界は利益率が非常に高いという点です。例えば以下のような営業利益率を誇る企業があります。(2024年業績)
企業名 | 国名 | 主力分野 | 営業利益率(目安) |
---|---|---|---|
NVIDIA | 米国 | GPU(AI) | 約60%以上 |
ASML | オランダ | 露光装置 | 約30〜35% |
TSMC | 台湾 | ファウンドリ | 約40〜50% |
東京エレクトロン | 日本 | 成膜・エッチング装置 | 約25〜30% |
レーザーテック | 日本 | マスク検査装置 | 約40%前後 |
一般的な製造業では、5〜10%位で優良企業されているので、上記の企業は驚異的な高さです。
背景には次のような理由があります。
超高付加価値な製品
他では作れない高機能なチップや装置を扱うため、価格が高くても売れる。
高い価格支配力
競合が少なく、自社で価格を決めやすいため、利益が出しやすい。
参入障壁の高さによる競争緩和
技術や信頼が必要で新規参入が難しく、ライバルが増えにくい。
スケールメリットと製造効率の最適化
一度工場や装置を整えれば、大量生産でコストを大きく下げられる。
設計や知財収入(非製造)による利益率の高さ
設計専業ファブレスやIPライセンスなど、「モノを作らない」ビジネスは人件費以外の変動費が少なく、利益率が非常に高い。
強い企業の見つけ方:3つの視点
次に「強い企業(=今後も良好な業績が見込める企業)」を見つける視点をご紹介します。
「高シェア×高利益率」の鉄板企業
よく半導体関連の企業として名前が挙がるのは、このタイプが多いと思います。まさに業界の特徴を活かして、各分野のトップシェアを獲得しているリーディング企業たちです。
【グローバル企業の例】
-
ASML(オランダ):EUV露光装置を唯一量産できる企業。世界市場シェアはほぼ独占。
-
NVIDIA(米国):AI用GPUで圧倒的なシェア。
-
Broadcom(米国):スマホ・通信向けのアナログ/RF半導体でシェアが高く、Apple向け売上も大きい。
-
Texas Instruments(米国):アナログ半導体で世界最大手。産業機器向けに強く、安定的な収益体質。
【日本企業の例】
-
東京エレクトロン:成膜・エッチング装置で世界トップ3に入る。
-
レーザーテック:EUVマスクブランクス欠陥検査装置で世界シェア100%!
-
キーエンス:半導体装置や製造ライン向けの高性能センサーで高シェア。営業利益率50%超。
-
ディスコ:ウェーハ切断・研磨装置で高シェア。半導体製造後工程の超重要企業。
「参入障壁が高い」ビジネスモデル
半導体業界では、技術的なハードルや、顧客との関係性などから新規参入が非常に難しい分野が多くあります。その場合、一度成功すると、比較的長い期間、市場で優位なポジションを維持する傾向があります。
【グローバル企業の例】
-
ASML(オランダ):EUV露光装置を開発・量産できる世界唯一の企業。年間の製造可能台数が限られているので、顧客の方が競って購入するという逆転現象が発生。
-
Lam Research(米国):成膜・エッチング装置でトップ3に入る。ドライエッチング技術に強みがあると言われている。
-
Micron Technology(米国):DRAM・NANDを自社で開発・製造。莫大な設備投資と微細プロセスの継続的改良が必要で、新規参入はハードルが高い分野。
-
Analog Devices(米国):産業・車載向けアナログICは、製品認証が厳しく、信頼性実績が必要。認証取得に時間がかかるため、新規参入は遅れがち。
【日本企業の例】
-
レーザーテック:EUVマスクブランクス欠陥検査装置で完全な一強状態。高度な光学設計と信頼性評価に強みを持ち、後続企業が追いつくには長年掛かると言われている。
-
SCREEN:ウェーハ洗浄装置で世界的シェア。顧客プロセスごとに細かなカスタマイズが必要で、新規プレイヤーが参入しにくい。
-
信越化学工業:シリコンウェーハのシェア世界No.1。品質管理技術と安定供給体制が評価され、顧客との信頼関係が長期継続している。
-
アドバンテスト:半導体テスト装置はチップの高速化・多機能化に伴い複雑さが増しており、対応には深い設計・応用力が求められる。
成長分野にポジションを取れているか?
どんなに優れた企業でも、市場が縮小していれば成長は難しくなります。AIやEVなど需要が伸びる分野に強みがあるかどうかは、企業の将来性を見極める重要なポイントです。
【グローバル企業の例】
-
NVIDIA(米国):AI、生成系、HPC(高性能コンピューティング)の中心。
- AMD(米国):サーバー・AI用チップを強化。
-
Qualcomm(米国):5Gスマホ用SoCとモデムの大手。通信インフラの波に乗る。
-
onsemi(米国):車載用SiC・イメージセンサーで急成長。構造改革成功。
【日本企業の例】
-
ソニーグループ:CMOSイメージセンサーで世界シェアトップ。自動運転やスマホの高画質化に必須。
-
ローム:SiCパワー半導体の先進企業。EV(電気自動車)向けで成長。
-
HOYA:EUV対応基板の製造で世界トップシェア。
-
日本電産:ロボットやドローン、自動化機器に不可欠な超精密モーターで世界展開。