私は半導体業界で長く働いています。直近8年間は人事の仕事にも携わって、半導体業界の採用動向を間近で見てきました。
特にこの2~3年(コロナ禍の途中から)、半導体業界の採用事情は大きく変化しています。これまで一般的には馴染みの薄かった「半導体」という言葉が広がりを見せ、関連ニュースや半導体関連銘柄への投資の話題が増えたのと同時に、魅力的な求人も増加しています。
今回は「半導体エンジニア」の仕事に興味がある方向けに、情報をまとめてみます。
半導体エンジニアの求人数急増
2024年に転職エージェント大手のリクルートが発表した情報によると、「半導体エンジニア」の求人は、2013年前半比で2024年前半は14.9倍だそうです!(参照元)
「半導体エンジニア」って?
「半導体エンジニア」と一口に言っても、様々な職種があります。例えば以下のように分けられます。
設計エンジニア(開発系)
半導体チップの回路設計やレイアウト設計を担当。新しいデバイスの開発も含む。
代表的な職種:
- 回路設計エンジニア(アナログ、デジタル、RF)
- レイアウトエンジニア(マスク設計)
- デバイスエンジニア
プロセスエンジニア(製造系)
半導体製造プロセスの開発や改善を担当。歩留まり向上や新技術の導入も行う。
代表的な職種:
- プロセスエンジニア(成膜、エッチング、リソグラフィーなど)
- パッケージエンジニア(封止技術、実装技術)
設備エンジニア(装置、メンテナンス系)
半導体製造装置の導入、保守、最適化を担当。装置メーカー勤務の場合、顧客サポートも行う。
代表的な職種:
- 装置エンジニア(設備エンジニア)
- メンテナンスエンジニア
テスト、評価エンジニア(品質保証系)
製造された半導体の性能や品質を検証し、量産の安定化を図る。
代表的な職種:
- テストエンジニア(テストプログラム開発、ATE設定)
- 評価エンジニア(デバイス評価・信頼性試験)
技術サポートエンジニア(顧客対応、応用技術系)
顧客向けに半導体製品の技術サポートを行い、最適な使用方法を提案する。
代表的な職種:
- FAE(フィールドアプリケーションエンジニア)
- 技術営業(セールスエンジニア)
求人増加の背景
次に、半導体業界がこれ程までに伸びている理由を見てみましょう。
半導体需要の爆発的な増加
ご存知の通り、この10年間で、半導体はスマートフォンやPCだけでなく、自動車、データセンター、AI、IoT、5G、産業機器など、あらゆる分野で必要不可欠な存在になりました。特に以下の要因が需要を押し上げました。
- スマートデバイスの普及(スマホ、タブレット、ウェアラブル機器)
- データセンターとクラウドサービスの拡大(サーバー向け半導体の需要増)
- AI・機械学習の進化(GPU・AIチップの需要拡大)
- 電動化・自動運転の進展(車載半導体の市場拡大)
世界的な半導体供給不足
コロナ禍のリモートワーク需要増加に伴い、PC、タブレット、ゲーム機向けの半導体が一気に不足しました。更に、自動車産業でも半導体不足が深刻化し、2021年~2022年は世界的な半導体不足が社会問題になりました。
この供給不足を解消するために、世界各国で半導体の生産能力拡大が進められ、それに伴いエンジニアの需要が急増しました。
各国による半導体投資強化
米中対立や台湾有事の懸念を背景に、各国は半導体の自国生産を強化しています。特に、アメリカ、日本、EU、韓国、中国が大規模な補助金を投入し、新しい半導体工場の建設が進んでいることが求人増加の大きな要因となっています。日本ではTSMC熊本工場(JASM)や北海道のラピダスのニュースが話題になりました。
半導体技術の進化と専門人材の不足
半導体はどんどん性能が上がっています。それを支えるエンジニアには、高い専門性(知識やスキル)が求められる事も多く、多くの半導体関連企業では、人材の確保や育成に課題を持っています。その為、より魅力的な条件(高年収など)にしたり、未経験の方も歓迎にしたり、求職者にとってはチャンスです。
半導体業界の業績好調
これらの背景により、半導体業界でシェアを持っている企業の業績は好調が続いています。また、半導体業界は他業界に比べて利益率が高い傾向にあります。その為、人材への投資(年収UPや人材育成)に積極的な企業が多い印象です。